教材の良し悪しは学習効果を左右する
今回は「教材」について書きたいと思います。
塾講師や家庭教師が学習指導を行う際、学習効果を大きく左右する
ものとして「生徒がどんな教材を持っているか」が挙げられます。
どんなカリスマ塾講師やプロ家庭教師でも、良い教材がなければ成
績を上げるための正しい学習指導を行うことはできません。
教える側である講師からすると、生徒にどんな教材を用意してもらう
かというところから、すでに学習指導は始まっているといっても過言
ではありません。
▪︎解答解説のない問題集は使いものにならない
よくある事例として、解答解説を紛失してしまったり学校の先生が保
管していて、解答解説がない問題集を生徒が持参し、その問題集を使
用して指導するようにご要望いただく場合があります。
しかし、解答解説がない問題集を使用して演習を行っても、正しい解
答や解法が分からないため、問題を解くだけ時間の無駄です。
宿題でその問題集の問題を解いても、どれが正解でどれが不正解なの
か分からない。
となると、どこをどう復習していいか分からない。
「間違えた問題を間違えないようにする」ということが学力を上げる
唯一の方法であるのに、これでは学力の上げようがありません。
では塾の授業で使用するのはどうでしょうか。
「塾の先生なら正しい答えが分かるはず」と思う方もいらっしゃるか
もしれません。
確かに塾講師であれば専門科目はほぼ完璧に正解が分かるかもしれま
せんが、塾講師も人間ですから、体調や状況によっては間違えること
もたまにはあります。
この「間違えることもたまにある」という段階で、解答として使うに
は信頼性の低すぎるものになってしまいます。
例えば「たまに間違っている」解答解説があるとして、この解答解説
を使いたいと思う方はいるでしょうか。
おそらく「そんないい加減な解答使えない」と思われるでしょう。
塾の先生がどれだけ優秀であったとしても、解答解説の代わりには
なれないのです。
学校の先生が解答解説を回収しているのは、何か理由があります。
その問題集は学校の先生の指示通りに使用して、普段の勉強で使用す
る問題集は解答解説付きのものを別に準備することが得策です。
解答解説をご自身で紛失したという場合は、次回から失くさないよう
気をつけて、速やかに新しい問題集を購入することが大切です。
▪︎解説・解法が詳しく書かれている問題集を選ぶ
「解答解説がきちんとある」問題集であることの次に大事なことは、
「解説・解法が詳しく書かれている」ということです。
「解説・解法が詳しく書かれている」問題集の例として、高校数学の
「チャート式」シリーズ(数研出版)が挙げられます。
この「チャート式」シリーズは、例題や練習問題が載っている本体と
同じくらいの厚みの解答解説が付いており、全ての問題の詳細な解法
と解説が記載されています。
数学な苦手な生徒や自立学習で数学の予習を進めたい生徒にはこの
「チャート式」シリーズのうち、白色のもの(白チャートと呼ばれて
います)を使用して勉強することをおすすめします。
▪︎レベル別の問題が載っているか
次に大事な要素として、「基本・標準・発展レベルの問題が載ってい
る」ことが挙げられます。
新しい単元を学習する際、基本問題しか載っていないものや入試問題
など発展レベルの問題ばかり記載されている問題集を使用すると、自
分がどのレベルの問題まで解けるようになったのかを知ることができ
ません。
基本問題が解けたら、標準問題を解いてみる、それができたら発展問
題に挑戦する… という具合に、各単元で問題のレベルを徐々に上げ
ていくことがより深く理解するために大切なプロセスなのです。
▪︎類題がたくさん載っている問題集をプラスする
これまでに挙げた「解説・解法が詳しく書かれている問題集」や「レ
ベル別の問題が載っている問題集」にも欠点があります。
それは「類題があまり載っていないこと」です。
多くの「解説・解法が詳しく書かれている問題集」や「レベル別の問
題が載っている問題集」は、少ない問題を詳しく解説していたり、で
きるだけ多様なパターンの問題を少しずつ載せてどうにか1冊の問題集
にまとめています。
そのため、あるパターンの問題と同じような問題を数多く練習したいと
思ったときに、その1冊の問題集ではカバーできないケースが出てきま
す。
そうしたときに備えて、メインの問題集とは別に「類題がたくさん載っ
ている問題集」を準備することが大切なのです。
基本的な理解がしたければ基本問題〜標準問題が数多く載っているもの
を、入試レベルまで理解したければ標準問題〜入試問題が数多く載って
いるもの、という風に各々の目的に合わせてチョイスするといいかと思
います。
▪︎「定期テスト対策用問題集」と「入試対策用問題集」
は別物
これは特に中学生に当てはまります。
定期テスト対策を行う場合、中学校が採択している教科書会社の教科書
によって、扱われている内容が異なるため、その教科書に準拠した問題
集で勉強する必要があります。
しかし、入試問題は近年難化の傾向にあり、教科書レベルの問題を解く
だけでは入試対策が不十分であるため、教科書準拠の問題集で入試対策
をまかなうことはできません。
入試対策には入試レベルの問題に対応した問題集を使う必要があるので
す。
それぞれの対策をできるだけ効果的に行うため、「定期テスト対策用問
題集」と「入試対策用問題集」は別物であることを理解し、それぞれ準
備することが大切です。
▪︎目的に合わせた複数の良質な問題集を組み合わせる
これまでに書いたことを踏まえてまとめると、教材を購入する上で大切
なことは「目的に合わせた複数の良質な問題集を組み合わせる」という
ことです。
それぞれの問題集には長所があり、同時に弱点があります。
それぞれの弱点を補い合うために複数の問題集を組み合わせることで、
はじめて効果的に勉強することができるようになります。
ドラクエやFFなどをプレイする際、「剣」だけを装備したり「鎧」だけ
を身につけて冒険を進める人はいないはずです。
その時購入できる最強の「剣」・「盾」・「鎧」・「籠手」・「兜」・
「アクセサリー」の全てを装備させ、敵やボスを倒しに行くでしょう。
勉強も、教材という「武器」や「防具」をしっかり準備して取り組む
ことが大事です。